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小倉発「絹のよう」と称されるシフォンケーキ 「THE.GOODMOOD」村田さんの【社会との関わり方】

小倉発「絹のよう」と称されるシフォンケーキ 「THE.GOODMOOD」村田さんの【社会との関...

小倉発、優しさでできたシフォンケーキ 福岡・小倉に工房を構えるTHE GOODMOODさん。「まるで絹のよう」と評される、とろける口どけのシフォンケーキ専門店です。 保存料や膨張剤に頼らず、卵・小麦・砂糖といった素材そのものの力だけでふくらませています。その日の温度や湿度、メレンゲの状態を細かく見極めながら、熟練の“シフォニスト” 村田さんが一台一台、手作業で焼き上げています。 だからこそ生まれるのが、軽やかで、しっとりとして、口の中でほどけるような食感です。「こんなシフォンケーキ、初めて」と言っていただける理由は、この“人の手と感覚”の積み重ねにあります。 おいしさの奥にある、女性が働き続けられる場所という想い THE GOODMOODの工房で中心となって働いているのは、多くが女性スタッフです。子育てと両立しながら働く人、一度仕事を離れたあと、もう一度自分らしく働く場を探してきた人。それぞれのライフステージを抱えながら、この工房に集まっています。 ここでは、「長く続けられる働き方」「家庭と仕事を無理なく両立できる仕組み」「一人ひとりの得意を活かせる役割づくり」を大切にしています。 機械では再現できない工程をあえて残し、人の感覚や丁寧な手仕事が価値になる現場をつくることで、女性が安心して働き続けられる場所を育てています。 このシフォンケーキがやさしい味わいなのは、レシピだけでなく、それを焼く人たちの暮らしや時間まで大切にしているからです。 食べることで、誰かの未来をそっと応援できるお菓子 THE GOODMOODのシフォンケーキは、ただ甘くておいしいお菓子であるだけでなく、誰かの「もう一度働きたい」という気持ちを支える場所から生まれています。 ふわりと軽く、でも心にやさしく残る一切れ。 あなたが楽しんでくださるそのひと口が、小倉の工房で働く女性たちの明日につながっています。

人と町を、一本のサイダーでつなぐ人      ——— 「つくること」と「続けること」 門司港サイダー、堀井さんの挑戦 ———

人と町を、一本のサイダーでつなぐ人 ——— 「つくること」と「続けること」 門司港サ...

「つくること」は、地域と人に向き合うことだった 一見すると、とてもシンプルな一本のサイダーです。けれど、その背景には、想像以上に長い時間と、数えきれない対話の積み重ねがあります。 このサイダーを手がけたのは、堀井さん。もともとウェブ制作を生業としてきた堀井さんは、「つくる」「売る」という行為を、画面の中だけで完結させることに、次第に違和感を覚えるようになったといいます。 ホームページは、あくまでビジネスの一部であり、宣伝手段のひとつ。本当にお客様に寄り添った提案をするためには、自分自身が実際に何かをつくり、売り、手に取ってもらう経験が必要だ――そう感じた堀井さんの思いが、形になったのがこのサイダーでした。 サイダーづくりは、決して平坦な道ではありませんでした。「どこで、誰と、どんなものをつくるのか」。試行錯誤を重ねた末、堀井さんがたどり着いたのは、昔ながらの製法を大切にし、余計なフレーバーを加えない、どこまでも素直な味わいでした。 流行を追うのではなく、土地にすっと馴染むものを選ぶ。その判断には、堀井さん自身の価値観が色濃く表れています。 完成したサイダーは、観光地のカフェや雑貨店、ホテル、ブライダルのギフトなど、少しずつ人の手に渡っていきました。決して派手な展開ではありません。それでも堀井さんは、一本一本に、つくり手や飲み手それぞれの物語が重なっていく感覚があると話します。 「サイダーは、目的ではなく“きっかけ”なんです」 堀井さんが見据えているのは、商品そのもの以上に、その先にある風景です。地域を盛り上げたい。雇用を生みたい。働くことを、前向きに感じられる場所を増やしたい。その大きな思いに比べれば、サイダーはあくまで入口に過ぎません。 だからこそ、味もデザインも背伸びはしない。わかりやすく、誠実であることを、堀井さんは何より大切にしています。 現在運営しているカフェでも、その姿勢は変わりません。ベビーカー連れの家族、一人で静かに過ごしたい人、通りがかりにふらりと立ち寄る観光客。誰にとっても無理のない場所であるよう、席の配置や空間の使い方にも、堀井さんの細やかな配慮が行き届いています。 「特別なことはしていない」と堀井さんは言います。けれど、その“当たり前”を丁寧に続けることこそが、この場所の空気をつくっているように感じられます。 このサイダーを一言で表すなら――堀井さんは「人生が集まった一本」だと表現します。 飲む人それぞれに背景があり、思い出があり、その瞬間があります。堀井さんが手がけるサイダーは、そんな一人ひとりの時間にそっと寄り添いながら、静かに、けれど確かに、人と人、地域と未来をつなぎ続けています。

「使い切る」から始まる、やさしい循環   —— マウンテンブック山本さんの挑戦 ——

「使い切る」から始まる、やさしい循環  —— マウンテンブック山本さんの挑戦 ——

山本さんのものづくりは、「素材の背景」から始まっています。 山本さんは、もともとサプリメント事業を営む家庭に育ちました。 南米ペルーに駐在していた叔父の影響もあり、マカやカムカムといったスーパーフードが日本ではまだ知られていなかった時代から、健康素材に触れてきたそうです。 実家の事業では、妊活や女性の体調を支えるサプリメントを中心に、長年ネット通販に携わってきました。 その後、独立し、自身のブランドを立ち上げた山本さんが選んだのは、「サプリメント以外のかたちで、体にやさしいものを届ける」という道でした。 最初に取り組んだのは、地元の洋菓子店と共同で開発したクッキー。 一食で多様な栄養素が摂れることを目指し、マカや国産野菜を使った商品でした。 この経験が、のちの“素材そのものを活かす”ものづくりの土台になっています。 出汁パックは、「捨てられていた部分」から生まれました。 現在取り扱っている出汁パックのきっかけは、知人の椎茸農家からの相談でした。 出荷時に切り落とされ、行き場を失っていた椎茸の軸を、何かに活かせないか。 その問いに向き合う中で、「調味料を加えない、素材だけの出汁パック」という発想にたどり着いたといいます。 使用しているのは、福岡県北九州産の椎茸を中心とした国産野菜のみです。 塩や化学調味料を使わず、野菜そのものの旨みだけで構成されています。 乾燥させると重量は生の2割以下になるため、決して効率の良いものづくりではありませんが、それでも品質を優先しています。 製造や原料調達では、思うようにいかない時期も多くありました。 乾燥設備の問題、原料不足、テレビ放映に供給が追いつかなかった経験など、試行錯誤を重ねながら、現在の形にたどり着いています。 「全部使い切る」ことも、山本さんの美学です。 出汁を取った後のパックは、破って料理に使うこともできます。 ご飯に混ぜたり、離乳食に取り入れたりと、使い方はさまざま。 “出汁を取ったら終わり”ではなく、最後まで素材を使い切ることも、この商品の大切な価値です。 こうした考え方は、椎茸だけでなく、牛脂など未利用資源を活かす構想にもつながっています。 捨てられてきたものに目を向け、別の価値を与える。 山本さんの発想は、常に現場の会話や課題から生まれています。   人の話を聞き、つなげることも仕事の一部。 山本さんは、自身の商品を作るだけでなく、他の事業者の相談に乗ったり、アイデアを形にするサポートも行っています。 海外とのつながりを活かした販路の話や、展示会での出会いから生まれた協業など、その活動は多岐にわたります。 「特別なことをしている意識はない」と話しながらも、 話を聞き、背景を理解し、必要な人と人をつなぐ。...

日常の中にあったら、ちょっと嬉しくなるものを——— あしかクッキー、田村さんご家族でつくるクッキーの優しい世界

日常の中にあったら、ちょっと嬉しくなるものを——— あしかクッキー、田村さんご家族でつくるクッ...

北九州の街には、見た瞬間に思わず笑顔になってしまうクッキーがあります。それが、アシカクッキーです。 北九州の「区」や「地方」をそのままかたどった、ちょっと不思議で、とても愛らしい地図クッキー。見て楽しく、食べておいしく、そしてどこかあたたかい。そんなお菓子を生み出しているのが、田村さんご夫妻です。 もともと奥さまはお菓子づくりが大好きで、中学生の頃からバナナケーキやマドレーヌを焼き続けてきたそうです。「いつかこれを仕事にできたら」そんな想いを心の中でそっと温め続けていたそう。 そして約3年前。ちょうどコロナ禍で暮らし方が大きく変わり始めたころ、「どうせやるなら、好きなことで生きていこう」そう覚悟を決めて、お菓子づくりを“仕事”にする道を選びます。 最初はレンタルキッチンを借りてマルシェに出店。一つひとつ丁寧に前へ進んでいく日々に転期が。 大きな転機になったのは、北九州市60周年イベントへの出店です。北九州の“形そのもの”をかたどったクッキーが話題となり、そこから一気に注目度が上昇。なんと将棋の竜王戦「勝負スイーツ」にも選ばれました。「どこからご縁がつながるか、本当にわからないですね」と、田村さんも笑います。 「思いついたらまず作ってみる。ダメだったらすぐ直す」そのスピード感と迷いのなさも、アシカクッキーが進化し続ける理由のひとつです。 もちろん、可愛いだけではありません。着色料は使わず、野菜パウダーやココアなど自然素材で色付けし、110℃前後の低温で60分以上じっくり焼き上げています。小さなお子さんでも安心して食べられるように——そんな想いが、細部にまで宿っています。 目指すのは、特別な日のためのお菓子ではありません。「日常の中にあったら、ちょっと嬉しくなるもの」疲れて帰った日、テーブルにアシカクッキーがあったら、それだけでふっと気持ちが緩む。そんな“日常のごほうび”のような存在を目指しています。 お二人が目指しているのは、「なんだか懐かしい」「お母さんが焼いてくれたお菓子みたい」そう感じてもらえるような、やさしいお菓子です。 好きから始まった挑戦。地道な3年間の積み重ね。技術とデザインが重なって生まれた、唯一無二のクッキー。北九州という街へのまっすぐな愛情。そして家族でつくる、小さくて大きなブランド。 アシカクッキーは、「アイデア × 技術 × 家族 × 地域愛」そのすべてがぎゅっと詰まった、“物語のあるお菓子”なのです。

「一杯の先に、人が集まる」———  星月さんがつくる、中国茶サロンのあたたかな輪

「一杯の先に、人が集まる」——— 星月さんがつくる、中国茶サロンのあたたかな輪

北九州の街角に、ふと立ち寄りたくなる小さなサロンがあります。扉を開けた瞬間に感じるのは、ホッとするようなあたたかい空気。その中心にいるのが、オーナーの末永星月さんです。 取材中、最も印象的だったのは、星月さんが中国茶について語るときの表情でした。まるでスイッチが入ったように、一気に世界が開けていく。茶葉の種類、香りの違い、湯温の意味、飲み方によって変わる余韻——そのどれもが、迷いのない言葉で語られていきます。 驚くのは、その熱量の源です。星月さんはもともと「お茶をほとんど飲んでこなかった」と言います。子どもの頃は水ばかりで、お茶の知識はゼロに近かったと淡々と振り返ります。それでも、仕事をきっかけに偶然触れた中国茶に心を奪われ、そこから一気にのめり込みました。 “美味しい”と感じた瞬間、ただの飲み物ではなく、心を落ち着かせ、自分を整えてくれる存在だと気づいたのだそうです。その後は横浜・青山、専門店、生産者、さまざまな場所を訪ね歩きながら、時間を惜しまず学び続けてきました。「知れば知るほど興味が深まっていくんです」と語る姿は、語学のように、ある日突然理解が広がり、世界が変わるあの感覚に近いものを思わせます。 取材中も、お茶の話になると自然と語るスピードが上がり、身振り手振りが加わっていきます。たとえば、器の薄さが味にどう影響するか、飲み終わったあとに口を閉じて香りを鼻に抜くと本来の風味がわかること、——どれも生活のなかで実感してきたからこその言葉でした。 そしてもう一つ、彼女の姿勢を象徴していたのは、お客さまとのやりとりです。初めて来た人に対しても、好みや体調、どんな気分で過ごしたいかをていねいに聞き取り、その人に合う一杯を選びます。決して押しつけず、でも確かに相手に寄り添う。その自然な距離感が、話し込むでもなく、黙り込むでもなく、ちょうど良い“間”をつくっていました。 気づけば、星月さんの周りには人が集まり、訪れた人同士がゆるやかにつながっていく。サロンそのものがコミュニティのように機能しているのは、彼女の人柄と、茶に向き合う真摯な姿勢があるからこそだと感じます。 “もともとお茶には縁がなかった”——その言葉が信じられないほど、今の星月さんは中国茶とともに生きているようでした。彼女が注ぐ一杯には、知識と経験だけでなく、その長い年月で育った確かな愛情がそっと込められているように思います。