「一杯の先に、人が集まる」———  星月さんがつくる、中国茶サロンのあたたかな輪

「一杯の先に、人が集まる」——— 星月さんがつくる、中国茶サロンのあたたかな輪

北九州の街角に、ふと立ち寄りたくなる小さなサロンがあります。
扉を開けた瞬間に感じるのは、ホッとするようなあたたかい空気。その中心にいるのが、オーナーの末永星月さんです。

取材中、最も印象的だったのは、星月さんが中国茶について語るときの表情でした。
まるでスイッチが入ったように、一気に世界が開けていく。茶葉の種類、香りの違い、湯温の意味、飲み方によって変わる余韻——そのどれもが、迷いのない言葉で語られていきます。

驚くのは、その熱量の源です。
星月さんはもともと「お茶をほとんど飲んでこなかった」と言います。子どもの頃は水ばかりで、お茶の知識はゼロに近かったと淡々と振り返ります。それでも、仕事をきっかけに偶然触れた中国茶に心を奪われ、そこから一気にのめり込みました。

“美味しい”と感じた瞬間、ただの飲み物ではなく、心を落ち着かせ、自分を整えてくれる存在だと気づいたのだそうです。
その後は横浜・青山、専門店、生産者、さまざまな場所を訪ね歩きながら、時間を惜しまず学び続けてきました。
「知れば知るほど興味が深まっていくんです」と語る姿は、語学のように、ある日突然理解が広がり、世界が変わるあの感覚に近いものを思わせます。

取材中も、お茶の話になると自然と語るスピードが上がり、身振り手振りが加わっていきます。
たとえば、器の薄さが味にどう影響するか、飲み終わったあとに口を閉じて香りを鼻に抜くと本来の風味がわかること、——どれも生活のなかで実感してきたからこその言葉でした。

そしてもう一つ、彼女の姿勢を象徴していたのは、お客さまとのやりとりです。
初めて来た人に対しても、好みや体調、どんな気分で過ごしたいかをていねいに聞き取り、その人に合う一杯を選びます。決して押しつけず、でも確かに相手に寄り添う。
その自然な距離感が、話し込むでもなく、黙り込むでもなく、ちょうど良い“間”をつくっていました。

気づけば、星月さんの周りには人が集まり、訪れた人同士がゆるやかにつながっていく。
サロンそのものがコミュニティのように機能しているのは、彼女の人柄と、茶に向き合う真摯な姿勢があるからこそだと感じます。

“もともとお茶には縁がなかった”——その言葉が信じられないほど、今の星月さんは中国茶とともに生きているようでした。
彼女が注ぐ一杯には、知識と経験だけでなく、その長い年月で育った確かな愛情がそっと込められているように思います。