
「100年続ける理由がちゃんとある。」——カネナ醤油・長友さんが継いだ蔵と、新しい挑戦
宮崎市青島に根を下ろし、140年近く家族で醤油をつくり続けてきた「カネナ醤油」。4代目を継いだのは、東京や海外で金融業界に携わっていた長友さん。父の病を機に帰郷し、蔵を受け継ぐ決断をしました。
「惰性ではできない仕事」と語る長友さんは、伝統を守りながらも新しい商品開発にも挑戦しています。支えとなったのは、家族の言葉と地元の味への信念でした。
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青島の地で、記録も残らず続いてきた蔵
創業からおよそ140年。しかし記録も写真もほとんど残っていないという「カネナ醤油」は、まさに“日々の積み重ね”だけで続いてきた家族蔵です。温暖な青島の気候のもとで、代々の手仕事が今の味を形づくっています。
金融の道から一転、覚悟を決めて家業を継ぐ
東京や海外で金融の世界に身を置いていた長友さん。醤油蔵を継ぐつもりはまったくなかったと言います。そんな彼女を動かしたのは、父の急病と、夫からの言葉。「潰すのは1日、立て直すのはまた100年かかる」——この言葉が背中を押しました。
地元に根付く“やさしい甘さ”が生き残った理由
カネナの醤油は、宮崎らしい甘みが特徴。驚くほど甘いと感じる人もいる一方で、一度ハマると抜け出せない味でもあります。この“違い”こそが、小さな蔵が生き残ってきた理由。通販でも熱心なファンが付き、リピート購入が続いています。
伝統を守りながらも「遊び心」を忘れずに
製造環境は決して楽ではなく、特に夏場は温度管理に苦労するそうです。それでも「惰性ではできない仕事ですから」と静かに笑う長友さん。現在はへべすを使った胡椒や、手づくり味噌キットなど、新しい商品開発にも取り組んでいます。「守るだけじゃなく、遊び心も大事にしたい」という言葉に、未来へのまなざしが見えました。
100年続いてきたのは偶然ではなく、理由がある。そしてそれを次の世代へつなぐには、今を生きる者の覚悟と行動が欠かせない。長友さんが青島で見せるのは、まさにその実践です。醤油を通して、地域とともに生きるという選択。その一滴に、ぜひ触れてみてください。