「使い切る」から始まる、やさしい循環 —— マウンテンブック山本さんの挑戦 ——
山本さんのものづくりは、「素材の背景」から始まっています。
山本さんは、もともとサプリメント事業を営む家庭に育ちました。
南米ペルーに駐在していた叔父の影響もあり、マカやカムカムといったスーパーフードが日本ではまだ知られていなかった時代から、健康素材に触れてきたそうです。
実家の事業では、妊活や女性の体調を支えるサプリメントを中心に、長年ネット通販に携わってきました。
その後、独立し、自身のブランドを立ち上げた山本さんが選んだのは、「サプリメント以外のかたちで、体にやさしいものを届ける」という道でした。
最初に取り組んだのは、地元の洋菓子店と共同で開発したクッキー。
一食で多様な栄養素が摂れることを目指し、マカや国産野菜を使った商品でした。
この経験が、のちの“素材そのものを活かす”ものづくりの土台になっています。

出汁パックは、「捨てられていた部分」から生まれました。
現在取り扱っている出汁パックのきっかけは、知人の椎茸農家からの相談でした。
出荷時に切り落とされ、行き場を失っていた椎茸の軸を、何かに活かせないか。
その問いに向き合う中で、「調味料を加えない、素材だけの出汁パック」という発想にたどり着いたといいます。
使用しているのは、福岡県北九州産の椎茸を中心とした国産野菜のみです。
塩や化学調味料を使わず、野菜そのものの旨みだけで構成されています。
乾燥させると重量は生の2割以下になるため、決して効率の良いものづくりではありませんが、それでも品質を優先しています。
製造や原料調達では、思うようにいかない時期も多くありました。
乾燥設備の問題、原料不足、テレビ放映に供給が追いつかなかった経験など、試行錯誤を重ねながら、現在の形にたどり着いています。
「全部使い切る」ことも、山本さんの美学です。
出汁を取った後のパックは、破って料理に使うこともできます。
ご飯に混ぜたり、離乳食に取り入れたりと、使い方はさまざま。
“出汁を取ったら終わり”ではなく、最後まで素材を使い切ることも、この商品の大切な価値です。
こうした考え方は、椎茸だけでなく、牛脂など未利用資源を活かす構想にもつながっています。
捨てられてきたものに目を向け、別の価値を与える。
山本さんの発想は、常に現場の会話や課題から生まれています。

人の話を聞き、つなげることも仕事の一部。
山本さんは、自身の商品を作るだけでなく、他の事業者の相談に乗ったり、アイデアを形にするサポートも行っています。
海外とのつながりを活かした販路の話や、展示会での出会いから生まれた協業など、その活動は多岐にわたります。
「特別なことをしている意識はない」と話しながらも、
話を聞き、背景を理解し、必要な人と人をつなぐ。
その積み重ねが、今の仕事の広がりをつくっています。

山本さんが大切にしているのは、「続けられること」。
流行や派手さよりも、無理なく続けられる形。
体にやさしく、作り手にも負担がかかりすぎないこと。
その姿勢は、商品にも、関わり方にも一貫しています。
素材を知り、背景を知り、人を知る。
山本さんのものづくりは、そんな丁寧な積み重ねの先にあります